【2010/2/20付 Asahi.comより引用抜粋】
http://mytown.asahi.com/yamaguchi/news.php?k_id=36000001002200003◆放火事件判決 責任能力を認める
広汎性発達障害の一つアスペルガー症候群と診断された被告に、刑事責任能力がどこまであったかが争点となった裁判員裁判の判決が19日、山口地裁であった。向野剛裁判長は、現住建造物等放火罪に問われた田布施町別府、無職内山幸子被告(27)の責任能力を認め、懲役3年6カ月(求刑懲役5年)の実刑判決を言い渡した。
判決は、内山被告がアスペルガー症候群により、自宅を放火することにこだわりを持っていたことは認めたものの、「父や伯母に危険が及ばないように常識的な判断で自分をコントロールしている」と判断。「行動を抑えることが著しく困難な状態ではなかった」として、責任能力があったと認めた。
実刑とした理由については「社会での更生は期待し難く、再犯の可能性もある」と指摘する一方で、「(障害は)生まれつきで、本人にはどうしようもない。早期に発見し、治療されていれば症状の緩和も見込まれた」などとして減刑した。
判決言い渡し後、向野裁判長は内山被告に、「父や伯母が悲しんでいる。たとえそれが分からなくても、悲しんでいるということを知ってください。自分がされて嫌なことは相手にとっても嫌なことということを知ってください」と語りかけた。
相馬博之検事は「責任能力やアスペルガー症候群など、難しい問題が争点となったが、適切な判断をしてもらった」と話した。末永久大弁護士は「治療がかなわず、障害の克服による解決が先送りになった。早期に司法・行政・医療の制度面での構築が必要だ」とした。
◆医学専門用語 難しかった
判決後に地裁内であった記者会見には、3人の女性裁判員が出席した。一様に「理解が難しく、疲れた」と述べつつ、「被告や障害について真剣に考えて結果を出せた」と充実した表情もみせた。
35歳の裁判員は、審理で一番印象に残ったことについて「判決とその時の被告の表情」と答えた。判決では、犯行にアスペルガー症候群による影響があるとしつつも、「責任能力の基準は他の同種事案と比較しても変えるべきではない」(裁判官の法的判断)として実刑判決になった。「個人的に言いたい思いはいっぱいあるが、(裁判長への)意見などに凝縮されている」と複雑な思いを口にした。
今回の審理では医学的な専門用語が飛び交った。弁護士や検察官はパワーポイントや専門書などを駆使し、用語も言い換える工夫をみせた。そうした点について裁判員の意見は様々だった。
別の裁判員は「聞き慣れない言葉で難しかった。(証人の)先生の説明で病気のことは分かった」。35歳の裁判員は「選ばれたその日から裁判が始まり、概念や用語、言い換えなどは分からなかった」。40代の裁判員は「(法廷では)話の内容を理解するので精いっぱいだった」。
一方、アスペルガー症候群に対する受け止め方が変わったという裁判員もいた。
◆アスペルガー 受容が大事
35歳の裁判員は「社会全体で考える必要がある。生活の中で関与することがあれば積極的に動くと思う」。40代の裁判員は「早い段階で病名が分かり、社会も受け入れていれば、彼女の症状はこれほど進まなかっただろう。病気を知り、私たちが受け入れることが大事だ」と述べた。
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■判決理由要旨■
父と暮らす自宅1階台所のグリルにサラダ油を入れて火をつけて床の一部を焼き、その後、さらに2階自室の布団に火をつけて、自宅を全焼させたという現住建造物等放火事案。
犯行はサラダ油を使用して2度も放火しており、極めて危険でしつような行為。親の監視から逃れたいという動機も自分勝手で短絡的といえる。被告に反省の態度は乏しく、病気ではなく治療は必要ないと述べており、社会での更生は期待しがたい。
一方、被告はアスペルガー症候群によるこだわりがあり、放火の衝動を抑える力がやや低かった。障害は生まれつきのもので、早期発見・治療ができなかったことは本人の責任ではない。
これらの事情から罪の下限である懲役5年は重く酌量減刑すべきだが、被告が刑務所での訓練を望んでいるとはいえ、大きく減刑することはできず、懲役3年6カ月に処すべきである。
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